米トランプ政権の中東政策
在米コラムニスト 久保田秀明
電子季刊紙 Salaam Quarterly Bulletin, 2017年2月, 春季号より
ドナルド・トランプ米大統領は1月20日の就任演説で、「米国第一」を内政、外交の基本原則として打ち出した。就任演説の内容を見ると、経済・貿易に焦点を当て、国際問題・外交への言及は少ない。ただ、「古い同盟を強化し新しい同盟を形成し、イスラム過激派テロに対して文明世界を結束させ、それを地上から撲滅する」とイスラム過激派テロとの戦いを強調したのが目立つ。
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1月20日、米議事堂前で聖書に手を置いて大統領就任宣誓を行うトランプ氏。
米国第一主義と「力による平和」
ホワイトハウスのウェブサイトも一新し、基本的政策課題として、エネルギー、雇用・経済成長、外交、軍事、法執行、貿易の6項目を挙げ、米国第一主義をより具体的に示している。
外交に関しては、「米国第一の外交政策」として、米国の国益と安全保障に焦点を当てると強調。「力による平和」を外交政策の中心に据えた。そこでも、「ISIS(イスラム国)や他のイスラム過激派テロ組織の撃退が最優先課題だ」と明言している。
オバマ前政権もイスラム国(IS)掃討を進めたが、その優先順位が明確だったとは言えない。「イスラム・テロ組織」という表現も避け、「暴力的過激主義」と言い替えていた。トランプ大統領の場合、イスラム過激主義とテロを明確に結び付け、イスラム過激派テロ組織掃討のため、「必要な時に、積極的な合同および連合の軍事作戦を追求する」という。「力による平和」の裏付けとして米軍再建を打ち出し、オバマ前政権下で継続してきた国防支出の大幅削減を停止し、国防予算増額を謳う。
テロとの戦いは
このほかテロとの戦いでは、「トランプ政権はテロ組織への資金を遮断するため国際パートナーと協力し、機密情報共有を拡大し、(テロ組織の)宣伝と人員募集を妨害するためにサイバー戦を実行する」と述べている。トランプ政権は、中東、北アフリカなどで継続するISなどイスラム過激派テロとの戦いを、オバマ前政権より積極的に推進すると見て間違いないだろう。
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米国と有志連合による対IS「生来の決意作戦」支援の一環でイラクのカヤラーウエスト飛行場で米兵に説明する空軍二等軍曹( 昨年11月19日、米空軍提供)
ただしホワイトハウスは、「我々が敵を求めて海外にゆかないことを、世界は知らなければならない」という。これは米国がもはや世界の警察官の役割を積極的に務めることはしないという意思表示とも取れる。トランプ政権の米軍増強はあくまで米国民と米国の経済的繁栄を守るためのもので、積極的に世界に紛争を解決し平和を回復・維持するためのものではない。イスラム過激派テロとの戦いを最優先するのも、ISやアルカイダが米国民の生命、米本土の安全を直接脅かしているからだ。ISとの戦いで、トランプ氏が米軍地上部隊を中東や北アフリカ、南アジアに直接投入するかどうかは、まだ定かでない。
「我々は誰にも我々の生き方を押し付けることを求めない」
トランプ氏は就任演説で、「我々は誰にも我々の生き方を押し付けることを求めない」と強調した。米国の大統領はこれまで、自由と民主主義を米国の価値として掲げ、中東の独裁政権の民主化を積極的に助長する政策を取ることが多かった。ブッシュ政権のサダム・フセイン独裁政権打倒、民主政権樹立努力、オバマ政権の自国民に化学兵器を使用したシリアへの介入の試みはその例だ。トランプ氏の場合、民主主義、自由、人権といった普遍的価値や理念のために他国に軍事介入したり、他国の国造りに取り組むことはないと考えていいだろう。
「中東への短期的、中・長期的課題
トランプ政権は短期的には、イラク、シリア、リビアでのISとの戦いを推進する課題に直面する。とくにイラクの第2の都市モスル奪還作戦が当面の焦点だ。
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「生来の決意作戦」支援で海兵隊の電子戦機EA-6B にイラク上空で燃料を補給する空中給油・輸送機 KC-135( 愛称ストラトタンカー)=昨年11月29日(米空軍提供 )
ISとの戦いでは、トルコ、ロシア、シリア、クルド人民兵などシリア反政府勢力との関係調整が避けて通れない課題だ。トランプ氏はISとの戦いでロシアとの連携を求めると表明している。その場合、オバマ政権が敵視してきたシリアのアサド政権や前政権が支援したシリア反政府勢力との関係を修正せざるをえない。
中東におけるトランプ政権の中・長期的課題として、イラン問題がある。トランプ氏はオバマ政権が主導したイランとの核合意を破棄するとしてきた。イランは合意が破棄されれば核活動を元に戻すとしている。一方、ISとの戦いではロシアはイランと同盟を組んでいるため、トランプ政権はロシアだけでなくイランとの連携の可能性も考慮しなければならない。共和党主導の米議会はイランを信用しておらず、イラン制裁強化を求めている。トランプ氏は対議会、対イランで難しい交渉を迫られるだろう。
イスラエル・パレスチナ和平交渉は試練に
中東におけるもう1つの中・長期的課題は、2014年4月に頓挫したままのイスラエル・パレスチナ和平交渉の問題だ。1月15日にはフランスが主導してパリで中東和平に関する国際会議が開催され、約70カ国代表が参加した。「2国家共存」を前提にした和平交渉再開に向け国際的期待が高まっている。トランプ氏はイスラエル寄りの姿勢を鮮明にし、テルアビブにある米大使館をイスラエルとパレスチナが帰属を争っているエルサレムに移転すると表明している。これはパレスチナ側やアラブ諸国への挑発行為であり、和平交渉再開に大きな障害となる。トランプ政権登場で、中東和平はこれまでにない大きな試練に直面していることは間違いない。
日本イスラーム文化交流会館、東京都品川区にオープン
杉谷WCRP日本委員会理事長らが祝辞
宗教新聞編集長 多田則明
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日本イスラーム文化交流会館
東京都品川区東五反田に開設された日本イスラーム文化交流会館の開所式が昨年8月8日、各国大使館員など海外代表をはじめ、国会議員、外務省、①世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会、イスラーム研究者などを招いて行われた。
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日本イスラーム文化交流会館玄関でのテープカット。中央が徳増公明日本ムスリム協会会長。
午前11時半、海外からの来賓により会館玄関でテープカットが行われると大きな拍手が起こった。次いで礼拝が始まり、クルアーン(コーラン)が読誦された。
祝賀会に移り、謝辞に立った②日本ムスリム協会の徳増公明会長は、特に海外からの参加者に感謝の言葉を述べ、「日本イスラーム文化交流会館の開設は1952年に宗教法人日本ムスリム協会が設立されて以来の夢であり、会員はじめ多くの方々の理解と協力で実現した。当協会の活動の一つは、日本人に真のイスラームを紹介することで、近年、日本国内にもイスラームに関心を持ち、理解しようとする人たちが増えている。
一方、イスラームを理解できず、誤解している向きが多いのも現実だ。世界には16億人ものムスリムがおり、彼らとの友好親善はイスラーム理解が欠かせない。
日本人が主体に運営している当協会は、日本人の正しいイスラーム理解を目標として活動している。本会館ではイスラーム文化に触れ、世界とのムスリムとの交流を通して、日本人に真のイスラーム理解をもたらし、日本とイスラーム国との関係強化に貢献したい」と挨拶した。。
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駐日アルジェリア大使モハメッド・エル・アミン・ベンシェリフ閣下。
③在京アラブ外交官理事長のモハメッド・エル・アミン・ベンシェリフ駐日アルジェリア大使は、各界日本人参加者に謝辞を述べ、本事業に継続的な援助をしているサウジアラビア政府の功績をたたえ、「ヒューマニズムの確立のために手を取り合い、努力することはイスラームの教えの根本に他ならない。本会館の開設がアラビア語教育や在日ムスリムの交流、団結という日本ムスリム協会の活動の弾みとなることを期待している。日本人とイスラーム諸国民との交流でも成功するよう祈る」と述べた。
次いで、サウジアラビアのイブラヒム・ザイード宗教省大臣顧問の挨拶をサラフディン・アル・ガニン氏が代読、「祝福にあふれた本会館は、首都圏に留まらず日本に居住する多くのムスリムを受け入れ、イスラーム教育やムスリムの団結を可能にするであろう。サウジアラビア政府はイスラーム文化を広める活動には喜んで手伝いたい。皆さんにアッラーの導きと祝福がありますよう」との内容。
そのほか、トルコ大使館やUAE、④イスラーム連帯財団の代表から、それぞれ祝いの言葉が述べられた。
外務省中東アフリカ局第二課の森安克美氏は、「本会館の開設は日本ムスリム協会にとって発展の大きな足跡であるとともに、異なる文化・宗教間の対話・交流を進める上で弾みをもたらす。関係者各位の功績に敬意を表したい。日本ムスリム協会が国内の宗教団体との対話拡充に果たしてきた役割は大きく、本会館がその目的に活用されることを願う。外務省としてもイスラーム諸国との政治対話、開発協力を進めており、文化・人物交流を通じて双方向の交流、理解促進を図っており、協会との協力関係を強めたい」と挨拶した。
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杉谷義純(すぎたにぎじゅん)WCRP日本委員会理事長。
日本の宗教界を代表してWCRP日本委員会理事長の杉谷義純師は、「本会館に日本ムスリム協会が移転し、活動をさらに活発にすると聞いてうれしい。WCRP日本委員会に日本ムスリム協会も加盟し、精力的に支えて頂いている。昨年(2015)4月には、協会の協力により⑤世界イスラーム連盟(MWL)との共催で『ムスリムと日本の宗教者との対話プログラム』を東京で開いた。今年(2016)7月には、中東の宗教指導者を招き、イスラームの情報を得ながら、世界平和の行方を探った。これからもイスラームとの交流を深めていきたい」と祝辞を述べた。また、就任したばかりの小池百合子東京都知事からも祝電が届き、披露された。
海外に比べて日本のイスラーム教徒は少ないが、一般的にイスラーム教に対する偏見も見られず、杉谷理事長の挨拶にあったように、宗教界としてのイスラームとの交流も盛んである。ラマダーンの期間に渋谷区大山町の東京ジャーミーを訪ねると、若い女性が多いのに驚く。古代からイスラームとの文化交流があった日本には、イスラーム文化を理解する土壌があるように思える。日本イスラーム文化交流会館のオープンを機に、交流が一層進むことを期待したい。
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開所式に参列した人たち
脚注
①世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会=1970年、日本の主要な宗教代表者により京都で創設された、宗教協力に基づく平和活動を行う公益財団法人。
②日本ムスリム協会=日本における最初のムスリム(イスラーム教徒)の団体として1952年に設立され、1968 年に宗教法人として認可され登録された宗教団体。
③在京アラブ外交官=東京に駐在するアラブ諸国外交官の任意の集まり
④イスラーム連帯財団=イスラーム連帯財団はサウジアラビアのジェッダ市に本部があり、アジアやアフリカのムスリムたちに慈善、人道的な寄付をしている。政府間のイスラーム協力機構の下部組織の一つ。
⑤世界イスラーム連盟(MWL)=1962年に創立されたイスラームの国際組織。サウジアラビアのメッカに本部を置き、世界に40以上の支部を持つ。国連経済社会理事会に属し、協力、共生、対話の精神に基づいて人類の福祉に貢献する活動を展開している。
緑のクウェート Green in Kuwait
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アルシャヒード公園とバヤン植物庭園
ジャマール・アルアクロッカ
(クウェート人)
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Mr. Jamal Alakroka
Mr. Jamal Alakroka lives in Kuwait City. He graduated from George Washington University. He used to be Vice President of IT & Communications, United Networks, and Manager of Information Systems, Kuwait Institute for Scientific Research Dept.
アルシャヒード公園
アルシャヒード公園は、国道30 号線に沿った第一環状路に位置するグリーンベルトと呼ばれる公園の中に誰でも訪れることができる公園としてオープンした。グリーンベルトはクウェート旧市街と時代とともに発展した市街の中間地帯に創られている。建設中の博物館、記念碑、記念行事を行うことのできるゾーンがあり、地下には800 台が駐車できる設備が整っている。ゾーンの中にはクウェートのどこの市にも全くなじまない湖があり非常に興味深く、訪れる人々に一瞬クウェートにいることを忘れさせてくれる。公園には多種の文化施設や屋外の施設が用意される予定だ。多くのガイドが各コーナーに配置されアルシャヒード公園の歴史について説明を受けることができるのも大変よい。(https://www.kuwaitup2date.com/al-shaheed-park-kuwait/から)
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アルシャヒード公園(Provided by Mr. Jamal Alakroka)
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アルシャヒード公園(Photographer:Usman Choudhry, https://www.kuwaitup2date.com/al-shaheed-park-kuwait/)
バヤン植物庭園
6種類の植物庭園と4種の異なる気候ゾーンがあり、熱帯地帯、乾燥地帯、地中海沿岸、ヨーロッパ地方の植物展示に分けられている。休憩のためとビジネスのためのラウンジも整えられている。特製グラスハウス植物園として、多種の気候を完備したゾーンは開園記念式典が開催され、クウェート首長自身によって執り行われた。式典には政府の閣僚、高位の官僚が列席した。この植物園は首長のBayan 宮殿に位置し、15,793㎡の敷地を擁している。その中の3500㎡はグラスハウスの敷地で外来植物栽培のために供されている。外気の温度が最高摂氏53度になるにもかかわらず室内の気候は厳密にコントロールされている。(https://www.smiemansprojecten.nl/en/projecten/amiri-botanic-gardenから)
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バヤン植物庭園
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バヤン植物庭園を訪れる生徒たち
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school students are visiting the Botanic Gardens on 26 Jan, 2017. (https://www.kuwaitup2date.com/al-shaheed-park-kuwait/)
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バヤン植物庭園
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バヤン植物庭園
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バヤン植物庭園
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バヤン植物庭園
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バヤン植物庭園
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バヤン植物庭園
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バヤン植物庭園
記事の続きは、電子季刊紙 Salaam Quarterly Bulletin, 2017年2月, 春季号にて…